| 56空とは何でしょうか。 |
| 空の意味ですが、これには二つの意味がありまして、一つは虚ということです。もう一つは、実という意味があります。皆様が生れてから今までお考えになっている常識、知識は、この世を去ってしまいますと何の役にも立たないのです。必ず消えてしまいます。 その意味では、皆様の現在の考え方、立場、記憶は、全部空なのです。虚です。嘘です。この世では役に立ちますが、命の本質が分からないままでこの世を去りますと、現世のことは役に立たないのです。これが虚の空です。 実の空は、皆様の目が見えること、耳が聞こえること、又、皆様の心臓が動いていることです。皆様が今生きていらっしやるのは、大変尊いことでして、この事実をじっと見つめますと、そこから永遠の命が見えてくるのです。 釈尊は、現世に生きている命が、空だと分かった。どうして分かったかといいますと、空ではない命が見つかったから、今生きていることが空だと言えたのです。つまり、明けの明星を見て、死なない命の永遠性が分かったのです。だから、今まで死なねばならないと思っていた自分自身が空だと分かったのです。 釈尊は、虚の空と、実の空の両方を見たのです。本当の命を見た。だから、今生きている命は空だといえたのです。 空がなぜ難しく感じられるかといいますと、現在までの常識を持ったままで考えようとしているからです。今までの皆様の常識が、間違っているのです。魂の実体が分からないままの状態で、色即是空を考えようとしますと、どうしても分からないのです。 そこで、人間の考えが全部間違っているということをまず承知しようという、広い気持ちを持って頂くことになりますと、空の意味が少しは分かってくるでしょう。常識的な場から考えますと、難しいのです。常識を棚上げにして考えようという、積極的な勇気をお持ちになると、必ず分かるのです。 |